専攻講義科目として開講予定の「特別支援教育授業論」は、特別支援学級及び特別支援学校における「授業」のあり方について考え、それを担う実践的な力量を育むことを目的とした科目です。 なお、この科目の単位は、「特別支援学校教員免許」の単位としてもカウントされます。
●特別支援学級や特別支援学校には教科書がない?
特別支援学級や特別支援学校では、実際にどのような授業が行われ、子どもたちはどんな勉強をしているのでしょうか。見たことがない人や知らない人も少なくないかもしれません。小・中・高の間、休み時間や行事などで交流や共同学習を経験した人でも、日常の授業には触れたことがないかもしれません。
特別支援学級・特別支援学校の中には、「教科書」を使わずに授業が展開され、勉強している子どもたちが少なくありません。
教科書がないのに授業をするとはどういうことでしょうか。実は、その授業を担当する教師が、「教科書に替わる」子どもたちに伝えるべき文化・内容をこの広い社会の中から選択し、子どもたちが学ぶことができるようにわかりやすく「教材化」することによって、授業は成り立っています。当然のことながら、教科書がないわけですから、それを教えるための「虎の巻」や「指導書」といったものありません。教師が、子どもたちの実態を考慮して教材をつくり、授業の目標を立て、指導方法を決めているのです。
このような「授業づくり」を、特別支援学級や特別支援学校の教師は毎日行っています。
●「遊び」も勉強?
特別支援学級や特別支援学校をのぞいた時、そこの子どもたちは「遊んでばかりいる…」と思った人がいるかもしれません。実は、障害のある子どもたちには、この「遊び」もとても大切な勉強となります。このことは、教育内容の指針となる「学習指導要領」にもちゃんと書いています。
では、遊びを通して、子どもたちは何を学んでいるのでしょうか。また、子どもたちがよりよく学び、それを深めるためには、教師はどのような遊びを準備し、取り組む必要があるのでしょうか。学校において、子どもたちの健やかな発達と学びにつながる遊びに取り組むために、教師は(教師になる人は)「遊び」の意味・役割も学ばなければならないのです。
●集団の中でともに学び合う
「障害」という言葉を耳にした時、「知的障害」、「自閉症」、「ADHD」などと、医学的な診断名を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、例えば同じく「自閉症」と診断 された人であっても、その状態や特徴、個性は当然のことながら十人十色であり、一人ひ とり異なります。そのように状態が異なる人たちや、診断名が違う障害のある人たちを含 んで、特別支援教育は「集団」を軸に授業が展開されます。
子どもたちは、友だちや教師といった他者を介して学びを深めます。友だちの励ましに よって授業への意欲や動機づけを高め、ともに学び、ともに成長することの喜びを確かめ あっていきます。
この授業では、障害のある子どもたちの「集団」を一つのキーワードとして、「ともに学 び合う」授業を具体的に構想していきます。 テキストの一つ、特別支援学級の先生方の実践記録です。同書の実践を考察することから、 授業のあり方を考えます。
テキストの目次は こちらhttp://www.nginet.or.jp/shuppan/2009/mugi2009.html